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骨粗しょう症のお薬を飲んでいる方へ
2026/01/14
抜歯やインプラントの前に知っておいてほしい「顎の骨の病気」
今回ご紹介する論文の共同著者
市川おとなこども歯科口腔外科・矯正歯科
院長:伊藤慎一郎(口腔外科)
「骨粗しょう症の薬を飲んでいますが、
歯を抜いても大丈夫ですか?」
当院でとても多いご相談のひとつです。
骨粗しょう症や、がんの骨転移の治療で使われる
💊ビスホスホネート製剤
💉デノスマブ
は、骨折を防ぐために欠かせない大切なお薬です。
一方で、歯科治療、特に
🦷抜歯
🦷インプラント
などの外科処置では、注意が必要な場合があります。
顎の骨が治りにくくなる病気「MRONJ」とは?
骨の薬の影響で、まれに
⚠️顎の骨が壊死して治らなくなる病気
が起こることがあります。
これを
「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)」
と呼びます。
MRONJは、
- 抜歯後に骨が露出したまま治らない
- 歯ぐきの腫れや痛み
- 感染や腐骨(死んだ骨)の形成
などを引き起こすことがあります。
MRONJには2つのタイプがあります
実はMRONJは、使われているお薬の種類によって性質が異なります。
🔹ビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ)
🔹デノスマブ関連顎骨壊死(DRONJ)
見た目やレントゲンだけでは区別が難しく、
これまで明確な違いは分かっていませんでした。
今回ご紹介する 論文で明らかになった
「顎の骨の決定的な違い」
本研究では、実際に摘出された顎の骨(腐骨)を詳しく調べ、
「骨吸収窩(こつきゅうしゅうか)」という
骨が生きていた時に削られた痕跡に注目しました。
研究の結果
- BRONJでは、骨が削られた跡が多数残っている
- DRONJや通常の骨髄炎では、その跡がほとんど見られない
つまり、
👉 壊死した骨を顕微鏡で調べることで
👉 原因となった薬剤の違いが分かる可能性がある
という重要な知見が得られました。
なぜ薬によって違いが出るの?
理由は、骨を壊す細胞(破骨細胞)への作用の違いです。
ビスホスホネート製剤
→ 破骨細胞は存在するが、うまく働けない
→ 骨を削ろうとした痕跡が残る
デノスマブ
→ 破骨細胞そのものが作られにくい
→ 骨を削った跡がほとんど残らない
この違いが、顎の骨の治り方にも影響すると考えられます。
抜歯・インプラントと深く関係します
MRONJは、
- 抜歯
- 合わない入れ歯
- インプラント手術
などをきっかけに発症・悪化することがあります。
そのため、
「どの骨の薬を、どれくらい使っているか」
を理解した上での判断がとても重要です。
これは一般歯科では難しく、
🦷口腔外科の専門領域🦷 になります。
当院が大切にしていること
当院では、
- 服用している薬の種類
- 使用期間や休薬歴
- 全身状態
- 抜歯やインプラントの必要性
を総合的に判断し、
「今、抜歯すべきか」
「時期を待つべきか」
「保存治療を優先すべきか」
を慎重に決定します。
院長からのメッセージ
骨粗しょう症のお薬は、人生を守るためのとても大切な治療です。
だからこそ、歯科治療の際には正しい知識と専門的な判断が必要になります。
私は本研究に、顎骨壊死(MRONJ)の病態を解明する
論文の共同著者として関わってきました。
研究で得られた知見を、
論文の中だけで終わらせるのではなく、
目の前の患者さんの安全な治療につなげることを大切にしています。
「骨の薬を飲んでいるけど歯科治療が不安」
「抜歯やインプラントを勧められて迷っている」
そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。
今回ご紹介した共同著者の論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33830351/
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